書籍/BOOK

ぼくは戦争は大きらい

著者
やなせたかし
出版社
小学館

内容

『アンパンマン』の作者であるやなせたかしが自らの戦争体験を綴った本。やなせは1915年の春に召集を受け、小倉の野戦銃砲部隊に入隊。召集期間満了直前の16年12月8日の開戦により、召集延期に。その後、中国戦線に派遣され、上海郊外で終戦をむかえた。やなせは自伝などの中で簡単に戦争のことを語っているが、戦争体験だけをまとめて話すのは、これが初めて。人殺しも、団体生活も嫌だったというやなせにとっての軍隊はばかばかしいだけの世界。しかし、辛い中にも何か楽しみを見出していく持ち前の性格で、戦争と軍隊を内部から風刺していく。特攻に志願した弟との別れなど、辛く悲しい思い出にも持ち前のユーモアを交えながら語る笑いと涙の戦記。嫌いな戦争のことはあまり語りたくないと考えていたやなせが、90歳を超え、戦争体験、軍隊体験を語り継ぐことで、過去の戦争のことが未来を生きる世代の記憶に少しでも残ればいい、と亡くなる直前まで語ったラストメッセージ。

もくじ

1

はじめに

2

第一章 軍隊に入ってみたら、こんなところだった

3

第二章 決戦のため、中国に渡ることになって

4

第三章 ようやく故郷に戻る日が来た

5

おしまいに

はじめに

〈はじめに〉
この本は、ぼくの戦争体験を綴ったものです。
自伝などの中で簡単に戦争のことをお話したことはありましたが、戦争体験だけをまとめて話すのは、これが初めてです。
ぼくは、昭和15年から5年間、日本陸軍の兵隊でした。でも、よほど運がよかったのか、激戦地には行かずに、大きな戦闘も経験せずに生きて日本に戻ってきました。
ぼくはもともと、戦争も軍隊も大きらいです。戦争のことを思い出すのも、話すのも嫌だったので、これまでほとんど戦争のことは語らずにきました。長年一緒にいるスタッフにも、戦争の経験はほとんど話したことがありません。
たまに、「ぼくは兵隊に行ったことがあるんです」とお話しても「嘘でしょ」とという反応が返ってくることがほとんどでした。それくらい戦争のことは、きれいさっぱりと忘れていたのです。
今頃になって、なぜ戦争中のことを話す気になったか、というと、ひとつにはぼく自身が90歳を超えて、同世代にはもう戦争体験を語れる人はほとんどいなくなったことがあります。
戦争を語る人がいなくなることで、日本が戦争をしたという記憶が、だんだん忘れさられようとしています。人間は、過去を忘れてしまうと同じ失敗を繰り返す生き物です。
ぼくは、もうお墓も戒名も決めて、いつ死んでもいい状態だからいいのですが、もし日本が戦争になったら若い人たちがかわいそうです。
激戦地で大変な思いをしたみなさんからすれば、「なんだ、本当の戦争はこんなものじゃなかった。」とおしかりを受けるかもしれません。でも、ぼく自身の戦争体験、軍隊体験を語ることで、過去の戦争のことがみなさんの記憶に少しでも残ればいい、と思います。

本について

内容
詳細
単行本
144ページ
出版社
小学館
言語
日本語
ISBN-10
4778035089
ISBN-13
978-4778035082
発売日
2013/12/17
梱包サイズ
18.8 x 13.2 x 1.8 cm

おしまいに

ぼくは人を殺す戦争が大きらいです。憎くもなんともない人を殺すのは嫌なのです。
死ぬのも嫌だったけど、もう94歳になると、そっちのほうはどうでもよくなりました。
戦争はしないほうがいい。
一度戦争をしたら、みんな戦争がきらいになりますよ。本当の戦争を知らないから「戦争しろ」とか、「戦争をしたい」と考えるのです。
戦争映画などを見るとカッコイイと思もうのかもしれませんが、本当は全然格好よくないのです。
アメリカではスーパーマーケットや学校で銃をぶっぱなす人がいますね。あれは映画やテレビの影響だと思います。悲惨ですね。
こんなことを言うと、「アンパンマンはばいきんまんをアンパンチでやっつけるじゃないか。あれはどうなんだ。」と反論する人がいます。
ばいきんまんは人じゃなくてばい菌です。しかも、やられたら「ばいばいきーん」と言い残して去っていきます。そして、また戻ってきて悪さをする。
アンパンマンとばいきんまんは、食べ物とばい菌です。だから、仲良くしてもらっては困るのです。それでも、彼らはマンガの中でともに生きています。
ぼくが最近怖いな、と思うのは、殺菌とか除菌がブームになって、ばい菌というだけで目の敵にして消毒してしまうことなんです。たしかに、インフルエンザとかノロウイルスは怖い。でも、なんでもかんでも殺菌してきれいにしてしまうのはおかしい。
無菌状態になると、今度は人間の抵抗力がなくなってしまいます。それでは本末転倒です。
なんだか、このところ世の中全体が嫌なものはみんなでやっつけてしまおう、というおかしな風潮になっているような気がしてなりません。
国と国が「あいつは気にくわないからやっつけてしまえ」というのではまた戦争になってしまいます。嫌な相手ともなんとかして一緒に生きていくことを考えなければならないのだと思います。
ぼくが言いたいのは、戦争にならないように、日頃からがんばって、みんなが戦争なんてしなくてすむ世の中にしよう、ということです。戦争をしなくていいんだから、軍隊なんていらなくなります。
でも、これはとても難しいことですよ。
第一次世界大戦が終わったとき、世界の人たちは「戦争はもうこりごりだ」と痛感しました。それで、国際連盟をつくったり、軍縮会議を始めたりしたのです。
ところが長続きしませんでした。
お互いに軍隊の数を減らしましょう、という会議を始めたら、「うちのほうがたくさん減らされて不公平だ」「向こうはずるいんじゃないのか」とそれぞれに主張を始めて、国際連合から脱退する国だ出てしまいました、日本もそうでした。
そうかと思えば、今だって、世界中で同じような状態が続いています。
ぼくは戦争の原因は「飢え」とか「欲」ではないか、と考えています。
腹が減ったから隣の国からとってこようとか、領土でも資源でもちゃんとあるのにもっと欲しいとか、そういうものが戦争につながるのです。
これは、生き物の生存本能だから困ります。
狭い地面に別々の植物を植えておくと、いつの間にか、片方が勢力を伸ばして、片方が枯れているということがよくあります。ちょっとでも肥えた地面をたくさん手に入れようとする植物同士も戦争があって、片方が負けたのです。
動物でも人間でも同じことですよ。
ただ、人間は頭のいい生き物だから、なんとかできるのではないか、と思もうのです。
ぼくが「アンパンマン」の中で描こうとしたのは、分け与えることで飢えはなくせるということと、嫌な相手とでも一緒に暮らすことはできるということです。
「マンガだからできることだ」「現実にはムリだ」なんて言わずに、若い人たちが真剣に考えてくれればうれしいです。

はじめに

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