書籍/BOOK

もうひとつのアンパンマン物語

著者
やなせたかし
出版社
PHP研究所

内容

何のために生まれて、何をして生きるのか。「それゆけ!アンパンマン」「手のひらを太陽に」の作者の愛と勇気の人生論。人の優しさ、心の痛み、生き方を綴った心温まるエッセイ集。

もくじ

1

まえがき

2

第一章 ボクと、正義と、アンパンマン

3

第二章 子どもは先生

4

第三章 人生はよろこばせごっこ

5

第四章 女の子・男の子

6

第五章 表紙の取れた本

7

あとがき

まえがき

エッセーをかくのは仕事のうちと思っていませんでしたので、昔は全部かきっぱなしで棄てていました。
ところが『映画之友』という雑誌にエッセーを時々かいていた時一通の手紙がとどきました。それは次のようなものです。
(私たち兄弟はやなせさんの文章のファンです。かいたものは全部スクラップしております。心が疲れた時は詠みなおします。すると不思議に心がリラックスします。残念なのは時々しか読めないことです。もっとたくさんかいてください)
ボクはこの手紙を読んでびっくりしました。「へぇ、かきとばしてしまった短い文章を読んでくださる人もいるのか」。
以後は棄てないでスクラップする事にしました。
この本は三冊のスクラップブックから編集してつくりました。ですから、どこからでも勝手に読んでくださればいいのです。
短い文章ばかりですから、一章せいぜい三分ぐらいで読めます。
ラーメンにお湯をかけてできあがる迄のひまつぶしに読む本というか、気軽なものばかりです。
「もうひとつのアンパンマン物語」というタイトルはアンパンマンとアンパンマンの作者であるボクはどこかに重なる部分がありますから、もうひとつのアンパンマンはあるいはボク自身のことなのかもしれません。
いずれにしても、ボク自身の素顔の部分はこの本の中にくっきりと映し出されています。
本人にとってはやはり面映ゆい恥ずかしいという気もいたします。
ボクはアンパンマンをかきはじめてから、いろんな不思議な経験をしました。テレビの放映がはじまってから、スポンサーの中では「アンパンマン会議」という会が生まれて毎月会合がありますし、アニメーションの声を担当している声優さんたちも他にたくさんの仕事をしているのにアンパンマンチームのようなものができて、私生活でもとても仲良くしています。
作者にとってこんなうれしいことはありません。
この本のタイトルにアンパンマンという文字が入っているので、ちいさな子どもが「あの本買って」といいはしないかとちょっと心配です。
しかし若いお母さんたちは子ども時代にアンパンマンの絵本を読んで育った人が相当数いますので、この本を読んでうなずいてくださる部分もあるかと思います。
エッセーの本をだすのは久しぶりなので、なんだかドキドキしています。
絵本にはすっかり慣れっこになって、新刊がでても心は次の本へ移っていて落着くひまもないのですが・・・・。

本について

内容
詳細
単行本
220ページ
出版社
PHP研究所
言語
日本語
ISBN-10
4569546552
ISBN-13
978-4569546551
発売日
1995/02
梱包サイズ
18.2 x 12 x 2.2 cm

あとがき

いつもあわただしい仕事ばかりしていて、一冊の本には大体平均して一ヶ月ぐらいしかいま迄はかけたことがありません。
この本は一年以上かかりました。
ボクにしては珍しく、編集・整理・その他すべてPHP研究所第一出版部のお世話になりました。
スクラップブックから整理したため、どこかでかいたものか定かでないものが多いのですが、中には対談のリライトなんかもお願いしてしまったものもあるのです。
だから、この本がもし良くできているとすればそれはすべてPHPの編集者の協力によるものです。反対にまずければ筆者のボクのせいです。
アンパンマンの裏話のようなものも入っていますが、理屈はあとからつけたようなところがあり、かきはじめる時はほとんど何も考えていませんでした。
まず丸い顔のアンパンマンができて、勝手に動き出し、作者のボクは一生けんめいそのあとを追いかけたにすぎません。
ボクのような仕事をしていて、アンパンマンのようなキャラクターにめぐりあえたことは千載一遇の幸福です。
ボクが作者であるとかそういうことはもうすっかりなくなってしまって、アンパンマンはもうひとつの人格と意志をちゃんともって子どもたちの中で生きています。
はじめは、手とり足とり育てていきますが、そのうちに親ばなれしてしまいました。
はえば立て、立てば歩めの親心といいますが、ボクも全く同じ心境でした。
世間の風は冷たく激しく吹きつけますから今日の流行児も明日はオチメということはいつも覚悟師しています。
できればいつ迄も元気で活躍してほしいのですが、未来のことはわかりません。
正直行ってボクはアンパンマンをとても愛しています。
この子がたよりという人生です。

一九九五年一月 やなせ たかし