書籍/BOOK

アンパンマン大研究

著者
やなせたかし・鈴木一義
出版社
フレーベル館

内容

アンパンマンはやさしくあるために空を飛び、頭をかじられたり、自分を傷つけながら多くの人を救う永遠のヒーロー。
アンパンマンをはじめ、物語の登場人物に関する質問にイラスト入りで答える。

もくじ

1

アンパンマンについて

2

ばいきんまん・ドキンちゃん・ばいきんせんにんについて

3

ジャムおじさん・バタコさん・チーズについて

4

カレーパンマン・しょくぱんまんについて

5

町と世界について

6

そのほかの登場人物について

7

パン工場・アンパンマン号について

8

ばいきんまんのメカ・ばいきん城について

9

番組について

はじめに

〈「アンパンマン大研究」について〉
ある日、「アンパンマン世界の研究」というパンフレットが送られてきた。差出人は、山形県の中学校で理科の先生をしている鈴木一義さんという人だった。
実は、この種のものはときどき送られてくる。どれもありがたくて読ませていただいているが、鈴木さんのものは一味ちがっていた。いかにも理科の先生らしく、ていねいな分析と観察がなされていると思った。
鈴木さんには、七歳の男の子と三歳の女の子がいる。その子たちと一緒になってアンパンマンを読んだり見たりしているうちに、大人の鈴木さんもアンパンマンに深い愛情を抱くようになったのだと思う。その愛情が底辺に流れている。
それに、鈴木先生の教え子たち、二四〇人もの中学生たちの質問がまたすばらしい。ちょっと僕でさえ気づかないところもあるし、とてもユニークだ。鈴木先生は、その質問に答えるかたちで、研究をまとめている。
僕がカルチャーショックをうけるようなところもあるし、作者としては少しちがうと思うところもある。でも、僕はこの研究をぜひ本にまとめて出版したいと思った。鈴木先生の研究以外のことも少し加え、僕の考えは「やなせもひとこと」として別に書いた。
僕はアンパンマンが大好きだ。鈴木さんもアンパンマンが大好きなのだ。だから、この本はアンパンマンが大好きな僕たちの、共同研究ということになるのかもしれない。
それから、僕はこの本のためにたくさんのスケッチを描いた。スケッチは、絵本になる前の姿なので、それは言って見れば素顔のアンパンマンだ。素顔を見せないという女優さんもいるが、この本では、いつもとちがう素顔のアンパンマンにも、どんどん登場してもらうことにした。

本について

内容
詳細
単行本
179ページ
出版社
フレーベル館
言語
日本語
ISBN-10
4577018985
ISBN-13
978-4577018989
発売日
1998/06
梱包サイズ
20.8 x 15 x 1.6 cm

おわりに

〈研究を終えて〉
アンパンマンワールドは、地球という星の、日本という国の物語なのかなあ。ひとまず研究を終えて、そう思いました。あんパンを初め、天丼、カツ丼、釜飯、そばなど、日本ならではの食べ物がたくさん登場しますし、日本独特の風習や行事である。餅つき、節分、ひな祭り、こいのぼり、盆踊りなどがあったりもします。つまり、アンパンマンワールドは、私たちの現実世界と、一種の平行宇宙(パラレル・ワールド)を作っているでしょう。
アンパンマンワールドにはお金が存在せず、互いに物をあげたりもらったりして生活しています。おなかをすかせて泣いている子どもはいたりするものの、なんとなく、みんなあまり不自由なく暮らしているように思えます。ほしい物がただで手に入るおかげか、犯罪も少ないようです。ときどき、ばいきんまんが騒動を起こしますが、私たちの世界で日常起きている凶悪な事件にくらべれば、実にささいなことです。自然もいっぱいで、緑の中にちょこんと町があります。自動車などもほとんど走らないので、交通戦争もなく、もちろん空気も汚れていないでしょう。そして、さまざまな人種の人たち(動物人間、食べ物人間、道具人間、エイリアンなど)が、なかむつまじく暮らしています。
なんと平和で、なんと平等な世界でしょう。人に対する信頼や思いやりこそが、この世界を支えている太い柱なのだなあ・・・。そう考えるとせつなくて仕方ありません。アンパンマンワールドは、日本人の理想郷のひとつなのだと思います。作者のやなせたかし氏が思い描く、理想の日本なのでしょうか。やなせ氏は童謡「手のひらを太陽に」の作詞者で、詩人でもあります。氏の願いが、アンパンマンワールドにこめられているのでしょうか。やなせ氏は、自身の著者「アンパンマンの遺書」(岩波書店)の中で、こう言っています。「正義とは何か。傷つくことなしに正義は行えない」
何のために生まれて 何をして生きるのか
わからないまま終わる そんなのはいやだ!
やなせ氏が作詞した「アンパンマンマーチ」の歌詞の一部です。氏は、問いかけています。きみは何のために生まれてきたのか、きみは何をなすべきか、と。
そして、私の研究もまだまだ続くはずです。
鈴木一義
〈やなせもひとこと〉
アンパンマンは世界中のアニメの中でも非常に珍しいタイプで、ファンは一歳から始まる。ところが最近になって年長者のファンも増えてきた。幼いときに絵本のアンパンマンを見知った人たちが、父親、母親の歳になってきたことも原因のひとつだろうが、鈴木さんのように、子どもと一緒にアニメを見ているうちに、親の方がはまってしまうケースもあるようだ。
アンパンマンはこれからだと、僕は思う。僕は才能に恵まれず、人並み外れて不器用なので、人が三日でできることに十年もかかる。今になって、やっと方向が見えてきた。
ともあれ、鈴木さんに厚くお礼を申しあげます。同時に、アンパンマンを支えてくださる多くのスタッフと、ファンのみなさんにも心からお礼を申しあげます。そして、この本をまとめるのに寝食を忘れても、やせずにガンバったフレーベル館の山口郁子さんにも。
これからもどうかよろしく。
(P・S)挿入したカットの多さにはまいった。これ意外と大変。
やなせ たかし