書籍/BOOK

愛・LOVE・優

著者
やなせたかし
出版社
やなせスタジオ

内容

モノクロのデュエット描き集め、やなせ先生が実費出版した詩集。第一弾。

はじめに

〈この本について〉
昔・昔、ぼくが自分の絵の方向性がつかめず思い悩んでいた頃、(といってももう決して若くはなかったのですが)デュエットの絵を500枚描いてみようかと突然思ったのです。
詩とメルヘンの表紙に毎月アベックを描きはじめていたし、モノクロの絵も試みていたので、黒と白のくっきりした切り絵調の絵でテーマは全部デュエットと決めました。
お恥ずかしい話ですが、この頃ラブアフェアが少しあり、何かに没頭することで忘れたいというところもあったのは情けない。
ですから淡々とした心境になった現在はとてもこういう絵は描けません。デュエットは描き続けていますがあっさりとした絵でしかありません。
そんなこんなであやふやにスタートしたのですが、仕事の量はかなりありましたし、今よりも旅にでることが多かったので、果して三ヶ月で500枚描けるかどうか、しかも〆切もなく原稿料もない仕事ですから、多分いつものように挫折すると思っていました。
はじめは一日にせいぜい一枚か二枚しか描けなくてこれは駄目だとあきらめかけていたのですが、100枚を過ぎるとスピードがついて連想ゲームみたいに描けるようになりました。だから動物シリーズとか果物シリーズとか、いろいろあります。ぼくはショートメルヘンの連載を二十五年やっていますが、これが絵を描くのとおんなじようなぐあいなので面白いですね。
それで三ヶ月めには500枚完成してゴールイン!
よし、それまで一万枚までやろう!
その時は勇しく言ったけれど、本質的にぐうたらなのでひと休みしたら、もうおしまいなのでそのままピリオド。
1998年の8月に香北町に詩とメルヘン絵本館をつくった時ふと昔の500枚の絵のことを思いだして絵葉書にしてみると、意外と好評で、今度は一冊だけだしてみようかということになったわけです。
絵だけではたよりないので、隣のページに何か文字を入れることにしたのです。
絵を見ながらいつもの拙速で二日間で50篇というのはどうもお粗末で心ぐるしい。
こんな本を買う人はあまり多くはないでしょうから、出版社にごめいわくをかけては申し訳ない。
実費出版でひっそりとだすことにしました。手描きにしたのは、下手も芸のうち、笑っていただければそれでいい。
こんな本をだしていいのかなぁ。
どうもなんだか面目ないやらてれくさいやら、恥ずかしいやらという複雑な気分です。

あとがき

ぼくの仕事は現在はアンパンマンを中心に動いているが、この本の絵を描いている頃には、「えーっ!やなせさんは漫画とか絵本もかくんですか」とびっくりされていた。
それより少し前は「えーっ!絵も描くんですか」と言う人がいるくらい売れてなかった。
そこから昔は無名の漫画家でそこから前は無名のグラフィックデザイナーで、そこから前はおびえがちなパッとしない少年だった。
ぼくにはほどんど青春というものはなかった。でも心の中にあこがれがあって、詩とメルヘンを創刊した時、足の長いスレンダーで貧しい少年と優しような少女のデュエットの絵を連作で描き続けていた。
それはぼくの夢の中の架空の青春像で全くバーチャルな世界だったのだが、困ったことにこの虚像とぼくの実像を錯覚してしまう少女郡(今の少女には生ぬるいと思うが)のファンが増えてとまどうことになる。
実物のぼくに逢えばあまりの落差の激しさに全員がっかりする。
とにかくラブシーンを描くのはやめることにしたが、幸か不幸かアンパンマンのヒットがあって、ぼくのファン層は完全に幼児年令になってしまったから助かった。
今はジャムおじさんでいい。
しかし昔描き続けた恋のカップルをこのままにして棄ててしまうのも惜しい。
もちろん恥ずかしさはあるけれど、それも架空青春のおもいでとして、出がらしスープの味わいもたまにはいいかもしれない。
人生だって一瞬の夢 それならば 悪夢よりも 甘美な愛の夢 愛・ LOVE・優

本について

項目
内容
発売日
1998/12/1
言語
日本語
購入先
販売停止