書籍/BOOK

明日をひらく言葉

著者
やなせたかし
出版社
PHP研究所

内容

「アンパンマン」「てのひらを太陽に」の父、やなせたかし。幼少期は劣等感に悩み、戦争も経験、作品がブレイクしたのは七十歳手前と、その人生は順風満帆ではなかったという。逆境でも希望を胸に前へ進んできた彼の言葉からは、生きることのよろこびがビシビシと伝わってくる。本書では心に刺さるやなせ氏の言葉を精選。忘れかけていた大切なものが、きっと見えてくる一冊。

もくじ

1

まえがき

2

第1章 愛情と育ち方
ーぼくはこんなふうに生きてきたー

3

第2章 仕事と運不幸
ー続けていれば、あるとき目の前の席が空くー

4

第3章 希望とよろこび
ー幸福は日常の中にひっそりとかくれているー

5

第4章 正義と善悪
ーアンパンマン倒すより助けるヒーロー

6

第5章 子どもと個性
ー力が足りないなら、ゆっくり走ればいいー

7

第6章 いのちと生き方
ー人生にムダはひとつもないー

まえがき

「なんのために生まれて なにをして生きるのか」というのは、ぼくの作詞した「アンパンマンのマーチ」の一節だが、実はこの言葉は自分自身への問いかけであった。
ぼくは五歳のときに父と死別した。生まれたときは未熟児であった。この未熟児コンプレックスは、ぼくの生涯にわたって付き纏うことになる。
体力においても、才能についても、容姿についても劣等感があった。
ぼくのまわりの人々はみんな温和で善良であったから、ぼくはなんとか逆風の中で生きのびることができた。
それでも小学生のころに自殺したくなって、路線をさまよったこともある。原因は忘れてしまった。ちいさな蟻にとっては小石も超えがたい巨岩に見え、水たまりも大海のようで絶望してしまう。兵隊にとられて中国の山野で銃をかついでいたときは、もう二度と故国の土を踏むことはないとあきらめていた。
焦土となった敗戦の祖国へ引きあげてきたときも、希望は何ひとつなかった。
それでもシドロモドロにぼくは生きのびてきた。「今日いちにち生きられたから、明日もなんとか生きてみよう」と思った。
漫画家としてやっとフリーになったが、まわりは天才、鬼才、異才がひしめいていて、とてもかなわない。
おまけにぼくは多病で、病気ばかりしていたので前途は真っ暗。それでもあきらめはしなかった。今までもなんとかなったのだから、辛酸なめているうちになんとかなると信じていた。心の奥底の部分が妙に楽観的でノンキなのである。困ったものだが、なんとなくピンチを脱出して、なんとか生きのびることができた。
売り出したい、流行児になりたい、異性にもてたいと思ったが、まるでダメだった。
「なんのために自分は生きているのか」と考えてのだが、よくわからない。C級の漫画家として、わけのわからない人生が終わるのだと思うと情けなかった。
ところが、大変に遅まきながら六十歳を過ぎたあたりから、あまり欲がなくなった。「漫画は芸術である」なんてえらそうなことは言わなくなった。
人生最大のよろこびは何か?
それはつまるところ、人をよろこばせることだと思った。「人生はよろこばせごっこ」だと気づいたとき、とても気が楽になった。
ぼくは歌の中で代表作のように言われている「てのひらを太陽に」の一節は、「生きているからかなしんだ」である。よく「なぜ悲しいんですか」と聞かれる。悲しみがなければ、よろこびはない。不幸にならなければ、幸福はわからない。空腹のときに食べるラーメンがどんなにおいしくて、幸福なのかは実感できない。ぼくらはこのさびしげな人生の中で悲喜こもごもに生きるのだ。そして、一番うれしいのは人をよろこばせることだ。
この本はPHPのスタッフが、ぼくの書いたものの中から編集して制作されている。
思えば、PHPとのえにしは深い。アンパンマンも、やさしいライオンも、その原型は雑誌「PHP」から始まっている。
この本もどこかで皆さんの心の琴線に触れることができれば、それがぼくのしあわせである。いつもよろこんでいただきたいと思って仕事をしているが、これがなかなかむつかしい。むつかしいからおもしろいとも言えますが、さて、どんなんでしょうか。

本について

内容
詳細
文庫
189ページ
出版社
PHP研究所
言語
日本語
ISBN-10
4569678319
ISBN-13
978-4569678313
発売日
2012/7/4
梱包サイズ
15 x 10.6 x 1.4 cm