書籍/BOOK

優・LOVE・美

著者
やなせたかし
出版社
やなせスタジオ

内容

昔に描いたモノクロの絵を集めて、やなせ先生自ら実費出版した詩集。

はじめに

〈冗談半分〉
冗談というか古い大昔に描いたモノクロの絵をあつめて愛・LOVE・優という本を実費出版しました。
今見ると恥ずかしさばかりが先にたち、こんな本はもう二度とださないと思っていたんですが、ぼくはいつでも考えていることと現実が逆になるんですね。
晩年になったら引退してゆっくりと暮そうと思っていたのがどういうわけかブレークしてしまってメチャクチャいそがしくなり、健康なだけが自分の取柄だといばっていたら、病気ばかりして入院のくりかえしとかね。
神様にからかわれているような気がします。
二度とださないと誓ったはずの本も、勝手に残った絵をあつめてきてまたあの続きをだしましょうと言われるとAB型はことわるのが下手だから、またまた続編を出版することをついつい承知してしまったのはだらしない。
面目しだいもありません。現在流行している漫画とはまるでちがいます。
ぼくは青春時代を戦争の暗黒の中で暮したから、いつまでも青春に対する強いあこがれが残っていて、貧しい青年の少女のデュエット絵は一種の夢の中の世界で、バーチャルランドの恋愛として描いたいたのです。
ところがこの絵の中のスレンダーな青年を作者のぼくと重ねあわせて錯覚する女性が多くて、これには慌ててしまいました。
現実のぼくに逢えばその落差の大きさに絶望するのは眼に見えてますから、申し訳ないことになる。
一時は対人恐怖症みたいになっていましたが、ごく気軽に人生の晩年に達したろくでなしのノスタルジーだと思って許してください。
ノスタル爺さんの冗談半分の世迷い言なんですからあまりシビアな批評はごかんべん。
ただ昔こんな絵を沢山描いて棄てもしないでとっておいたことは悪くなかったですね。
ひきのばして詩とメルヘン館の壁紙にしてみたら割合と面白くなりました。
一種の廃物利用、リサイクルみたいなものです。物置にしまいこんであった埃だらけの絵をもう一度クリーニングしてお見せしているというわけです。
前回がアイ・ラヴ・ユーだったので今回のタイトルはユー・ラヴ・ミーにしました。
昔の恋人ですから、今の若い人にはあまりうけないでしょうね。

あとがき

ぼくは普通の人よりずい分おくれて漫画家になり、ようやくプロとしてペン一本でなんとか生活できるようになりましたが、それでも自分の方向が解らなくて悩みました。
ナンセンスも大好きだったのですが、どうもうまく描けない。アンドレ・フランソワ、レイモン・ペイネというような、もしろ一枚もののイラストレーションに近い絵が好きでしたがもうひとつしっくりしない。
ふとしたきっかけで月刊「詩とメルヘン」を創刊して編集長をするようになってから、おぼろげに自分の細道が見えてきたような気がしたのです。
前途の見えない細道を辿って、果してどんなところにでるのか解らないまま道しるべのない道に迷いこみました。
やなせたかしの世界というものがあるかどうか。ぼくには解りません。
しかし何かしらこの道がぼくの道という思いはありましたね。
この本におさめたものと第一巻の愛・LOVE・優はその迷い路に咲いた無名のちいさな花のようなものです。
世にでることもなく、ひっそりと咲いて消えてしまった花をもう一度咲かせて、花束にしてみたというわけです。
ドライフラワーなので、もうすっかり水分は蒸発していますが、少しでもお楽しみいただけるところがあれば望外の幸福です。
おかげさまで第一巻は予想以上に好評で少しずつですが売れています。
今のところ一般書店には並べることはなく高知の詩とメルヘン絵本館、東京のアンパンマンショップ、北海道富良野のアンパンマンショップ二号店の三店のみで販売しています。
まえがきにも書いたとおり冗談半分の本ですが、ぼく自身が冗談半分の軽薄な人なのでお似あいかもしれません。今度こそ、これっきりで、もうやめます。
やなせたかし

本について

項目
内容
言語
日本語
発売日
2000/6/1
購入先
販売停止