“十病人”だけど“ダン爺”を目指すアンパンマンの父の暮らし方。
内容
もくじ
- 1
第一章 「人生はおもしろがらなければ損」という考え方
- 2
第二章 「規則正しい生活で、病気でも元気」という暮らし方
- 3
第三章 「病気をした分、工夫しておいしく」という食べ方
- 4
第四章 「老人らしく、なんてまっぴらごめん」という生き方
はじめに
1919年(大正8年)2月6日、高知県生まれ、AB型。
僕は、今年93歳になりました。
65歳まで仕事をしたら引退し、カミさんに見守られながら、ささやかな人生の最期を迎える。
そんなふうに考えていたのですが、人生というのは想定通りにはいかないものです。
漫画家としてなかなかヒット作が出なかったのが、「まもなく60歳」というところになって、なんとアンパンマンが大ヒット。65歳のころは仕事に追われ、引退どころではありませんでした。
そして、74歳のとき、ひとつ年上だったカミさんが、ガンで亡くなり、先に逝ってしまったのです。
93歳、現役漫画家。
こんなふうになるとは思っていませんでした。想定外です。
みなさんは「いつまでもお若いですね」とおっしゃってくださいますが、実際は病気だらけ。本人としては4分の3は死んでいる感じです。77歳の喜寿のころまでは元気で、「やなせさんは万年青年だね」と人からおだてられては、いい気分になり、自分がいくつかなんてすっかり忘れていました。
ところが、その後はまるで坂道を転げ落ちるように病気、また、病気。まさに”病気の総合商社”十病人”です。
まあ、アンパンマンのなかにバイキンマンを登場させているくらいなので、ばい菌と闘うのはしかたがない。それでも生きながらえてこられたのは、運もよかったのですよ。
僕が白内障を患い、左目がかすんで見えなくなったのは、日本でちょうど人工水晶体を入れる手術ができるようになった時期でした。当時はまだ3つの病院でしたが、その手術ができなかった。
また、心臓の冠動脈は細くなって詰まってしまったときには、そけい部の静脈からカテーテルを入れて血管を拡張し、ステント(金属製の菅)を挿入するという手術をしたのですが、この技術が導入されたのも、僕の手術の前年から。ギリギリセーフでその手術の恩恵を受け、局所麻酔で手術は2時間。5日後には退院しました。
こんなふうに、なんとなくいいタイミングで病気になっている。だから、僕が生きているうちに、万能細胞を使った医療が一般化しないかと楽しみにしているのですが。
さて、それはどうでしょう。
93歳、病気だらけの”十病人”。
でも、からだは病気になっても、心は病人気分になっていません。
病気になったらなったで、そこに楽しみを見つけ、おもしろがっているからかもしれません。
最近、「やなせさんの長寿法を教えてください」とよく聞かれるようになりました。
「秘訣といわれても、長寿になろうと思ってなったわけではないから、そんなものはない。もう4分の3は死んでいるんだ」と言うのですが、生活のあれこれを話すと、「それはおもしろい」「これは参考になる」とみなさんおっしゃるので、本にまとめることになりました。
僕が目指しているのは、ダンディならぬ”ダン爺”。
僕の”ダン爺”生活が、少しでもみなさんの参考になれば、長生きの甲斐もあるというものです。
やなせたかし
本について
- 内容
- 詳細
- 単行本
- 159ページ
- 出版社
- 小学館
- 言語
- 日本語
- ISBN-10
- 4093882673
- ISBN-13
- 978-4093882675
- 発売日
- 2012/9/1
- 梱包サイズ
- 18.8 x 13.2 x 2 cm